みらいハイスクール

単独では起こしえなかった化学反応に期待
島根県立島根中央高等学校/川本町

 

 島根県立島根中央高等学校(以下、島根中央)は島根県の川本町にある、みらいハイスクール共創校のひとつ。島根中央の学び舎の側には江の川が流れ、周囲は山々に囲まれた雄大な自然環境の中で高校生活を過ごすことができます。高校魅力化にもいち早く着手した島根中央は、地域みらい留学生の受入れ数においては、日本国内でもトップクラス。今回は、島根中央の校長である立石祥美先生(以下、立石先生)と島根中央の躍進を支える川本町役場の伊藤和哉さん(以下、伊藤さん)に、みらいハイスクールに参画することで目指す島根中央と川本町の未来をお話しいただきました。

 

 

学校がみんなが育つ拠点になる

 

―まずは、島根中央の特色を教えて下さい。

 

立石先生 島根中央では、色んなバックボーンを持つ生徒が入り混じる中で成長してほしいと考えています。留学生を含めた生徒はもちろんのことながら、生徒だけではなく、教職員や地域の人、みんなが育つ拠点になるのが学校だと考えています。そのためにも、高校魅力化や県外生徒募集も積極的に推進しています。

 

伊藤さん 町としては、高校魅力化とは特徴づくりをすることとも捉えています。その学校でしかできないことを創り、磨くということですね。しかし、教員の異動もあり、新しい特徴をつくり、それを継続していくという難しさもあります。その中で、どこで特徴を出していくかということを考えたときに浮かぶのは、「町」であり「地域」だと考えます。だからこそ、町と高校の協働が重要であり、強固な協働体制があるのが、川本町と島根中央の関係性だと思っています。

 

 

 

単独ではできないこともチームになればできる

 

―では、みらいハイスクール構想に参画しようと考えた背景を教えて頂けますか。

 

立石先生 もともと、島根中央は地域留学を単独で始めた過去があります。しまね留学や地域みらい留学の枠組みには入っていなかったということですね。しかし、これらの枠組みに入ったときに、単独だと限界があることでも、チームになることでチャレンジできることが新しく生まれたり、増えたりするということを実感しました。

 

―地域の高校だと、小規模の学校が多いゆえに、教員数も少なくやりたいことにもチャレンジできないジレンマもあったんでしょうか。

 

立石先生 そうですね。だからこそ、新しいことに挑戦するときには懸念も多くあります。しかし、それ以上にチームになることで、自校だけでは得られないノウハウを得られるということもあります。チームで挑戦してよかったという経験が過去にもあったわけです。こうした経験があったからこそ、みらいハイスクール構想での全国の学校と協働した新しい学校創りに島根中央も仲間になり、挑戦してみたいと思いました。島根中央の新しい特徴のひとつにもなっていくだろうとも考えましたね。

 

伊藤さん 島根中央ではカヌーや女子野球など、他校にはないような部活動での特徴がありますが、みらいハイスクールはこうした象徴的な部活動と並ぶ学びのコンテンツだと捉えています。島根中央や川本町に来てもらう理由になってくると思っていますよ。

 

 

挑戦した生徒が周囲への変化をももたらす

 

―みらいハイスクールに参画して、生徒や先生、地域の人に変化は見られますか?

 

立石先生 とある生徒がインド留学に行きたいと言い出してくれて、どうやって挑戦させてあげられるかを教職員で考えました。数年前までであれば、こうした生徒の希望に対して、授業期間でもあるため「学校としてそれはNoでしょう」となっていたかもしれません。その生徒は実際にインド留学をし、その後みらキャリにも参加をしてくれているようです。この生徒のように、どんどんチャレンジする生徒が当たり前のようにいることが、学校や教職員をも変えてきたと思っています。

 

伊藤さん 実は私の娘も昨年度、地域みらいキャリアに参加させてもらったんです。大きな変化というと難しいですが、日々の行動で変わったことは新聞を毎日読むようになったということです。地域みらいキャリアのメンターの方とのコミュニケーションの中で、新聞を読むことを習慣化することにしていったようです。地域みらいキャリアを終えた今でも、この習慣は続いています。父親として嬉しいのは、この習慣のおかげで私との会話に共通の話題ができたということです。私も同じ新聞を読んでいますからね。

 

立石先生 昨年度、山形県遊佐町への地域みらい旅に挑戦した生徒も学内で多くの挑戦をしてくれていて、その姿が周囲に多くの刺激を与えていますね。やはり、テレビの中の遠い存在よりも、目の前にいる友人や先輩の「あいつ、スゲーな」と思わせる行動というのは、大きな影響力があると感じますね。実は今年の1年生の中には、「自分も高2留学をしてみたい」という理由で島根中央に入学してくれた生徒もいます。

 

―着実に後輩に受け継がれ、島根中央の文化となりつつあるのですね。

 

伊藤さん そうですね。最近、地元の川本中学校の生徒の中に「島根中央に入学したら、みら旅に行けるんだよね!」と言ってくれる生徒がいることを聞きました。地元の生徒からも、こうした挑戦意欲に満ちた声が高まってきていることはとても嬉しいです。

 

 

 

高校の存在が地域の化学反応の起点となる

 

―では、このみらいハイスクールの取組も含めて、学校や町の未来をどのように思い描いているのでしょうか。

 

立石先生 生徒に対して思うのは、自分の可能性を限定しないでほしいと思います。どんどん広げてほしい。関心のあることが今はない人でも、どんどん探して見つけてほしい。それができる学校でありたいと思っています。それは生徒にとってだけではなく、教職員や地域の人にとっても同じことが言えます。最初にもお話ししましたが、みんなが育つ拠点に学校がなればと思っています。

 

伊藤さん 高校魅力化に着手した当初は、島根中央に対して「支援」や「応援」という言葉を使っていました。でも、今は「協働」なんです。生徒の成長のために、町も学校も一緒になって挑戦していると思っています。島根中央の存在は町の活力であり、化学反応の起点になっていると感じています。島根中央の女子野球部があるから、川本町で女子野球クラブチームを作ることに挑戦しました。島根中央のカヌー部があるから、隣の美郷町では充実したカヌー施設が整備され大きな大会等を誘致されていると思います。みらいハイスクールに参画することで、他地域の高校とも連携した、新しい化学反応に期待をしています。

 

立石先生 そうですね。島根中央だけでは起こしえなかった新しい変化を、共創校とともに生み出していきたいですね。共創校とは、新しい学びを創る“仲間”でありたいと思います。

 

(取材・編集 一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム 小谷祐介)

 

▶立石祥美 先生

島根県立島根中央高等学校 校長

島根中央での勤務後、島根県教育委員会地域教育推進室において、島根県内の高校魅力化推進を担当。2021年度4月から同校校長に就任。これまでの経験をもとに地域との協働と高校魅力化を積極的に推進し、今期で校長就任4年目を迎える。

 

▶伊藤和哉 さん

川本町役場 まちづくり推進課 課長/高校支援室 室長 

令和3年度より現職。川本町唯一の高校である島根県立島根中央高等学校の魅力化を高校の教職員とともに推進。今年度は、川本町に「女子野球で繋がるプロジェクト」を始動するなど、町の新しいチャレンジも精力的に牽引する。

 

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