10月某日、東京を舞台にした「地域みらい旅(以下、みら旅)」が開催されました。みらいハイスクール共創校のうち7校から計8名の生徒が参加し、東京に集う2日間。この旅の受入れ側となったのは、東京都調布市のドルトン東京学園中等部・高等部(以下、ドルトン)です。ドルトンからは6名の生徒が受入れ側としてサポート参加し、日本各地からの生徒を迎えました。今回のみら旅のテーマは「東京で世界に触れる」です。海外留学や海外進学に興味のある生徒同士が交流し、東京でグローバルな視点や意見に触れ、それぞれの価値観を共有しあう貴重な旅となりました。
今回は、受入れ校として日本各地の生徒を迎えた、ドルトンの英語科教諭・国際担当部部長である佐藤貴明先生(以下、佐藤先生)に受入れサポートをした2日間について、どのような思いで地域の生徒たちを迎えたのか、みら旅の間に何を感じたのかお話を聞いてみました。
▷プログラム概要
<1日目>
プログリット品川校訪問 海外経験のある社員との対話会
NTT e-City Labo訪問 世界視野での最先端技術に触れる
ドルトン訪問 ドルトンの生徒との対話会
翌日に向けたワークショップ
<2日目>
テンプル大学ジャパンキャンパス訪問 海外から日本に留学中の学生と対話会
振り返りと感想シェアの時間
※2日間の詳しい工程はコチラのレポート記事にてご覧ください。
自分を奮い立たせ、感じたことを伝えようとする生徒の姿
―今回のみら旅は1泊2日という短い期間でしたが、率直に受入れを終えた感想はいかがですか。
佐藤先生 日本と一口に言っても、住んでいる場所や学校によって、それぞれに個性やカルチャーを持っていると思っています。山形・大阪・広島・島根・高知・宮崎、そして東京と日本各地の学校から色んな価値観を持つ生徒が10数名も集うと、単独では起こり得ないケミストリーが起こるんだなということを感じました。
―特に印象的だったシーンはありますか。
佐藤先生 最終日に行った生徒同士の感想シェアの時間はとても印象的でしたね。立候補制でそれぞれにこの旅で生徒たちが感じたことをシェアしていく時間です。生徒たちの自分を奮い立たせながら、迷いの中で感じたことを伝えようとする姿はよく覚えています。中には感極まって声を詰まらせたり、涙を流したりしている生徒の姿を見て、たった24時間という短い時間にもかかわらず、最後にそれだけ気持ちが昂ったのは、生徒たちにとって密度の濃い時間を過ごした結果だと思います。
一人の思いだけでは実現し得なかった
―かかわっていたドルトンの生徒に起きた変化は何か感じられていますか。
佐藤先生 本校は学内でのプレゼンテーション機会が比較的多い学校だと思っています。今回のみら旅では、共創校の生徒たちが本校生徒のプレゼンテーションを聞いていただくシーンがありました。そこで、ドルトンの生徒たちは、他校の生徒たちが自分たちのプレゼンテーションに、思っていた以上に感動してくれるということを目の当たりにしました。
学校内では当たり前だったことが、外の人に伝える機会を得たときに、これまで学んで研さんを積んできたものが世の中から評価されるものだと再認識できた。これは生徒たちにとって、非常に大きな経験で自信に繋がったのではないかと思います。
―冒頭にケミストリーが起きたと仰られましたが、具体的にそれを感じたシーンはありますか。
佐藤先生 今回のみら旅の中で、とても嬉しい出来事がありました。本校のある生徒が地域・教育魅力化プラットフォームの代表理事である岩本悠さんに話しかけたんです。彼女は「地域間格差」に対する課題意識は持っているものの、まだまだ解像度も低い状態だったと思います。そんな様子を感じた岩本さんは彼女に対して「折角、そういった意識を持っていて、そして今日地域の高校と繋がりができたんだから、地域へ行ってみなよ」と背中を押してくれました。
その言葉がきっかけで、その生徒は山形県立小国高等学校(以下、小国)を訪問することが決まったんです。小国の皆さんにも柔軟に対応をしていただき、11月には訪問が実現しました。
一人の思いだけではなかなか実現し得なかったことが、「こと」として実際に起こったのは嬉しかったですね。
未来への展望:お互いの魅力を発見し合う関係へ
―そうした化学反応を目の前で見た佐藤先生が考える、学校として地域と繋がることの価値とは何だと思いますか。
佐藤先生 都心に位置している学校として肌感覚で感じているのは、地方・地域に「田舎」を持たない子どもたちが増えてきているということです。「ふるさと」のようなものがない子ども達からすると、地方・地域に実際に触れる機会自体がないので、こうした繋がりから、本校生徒が地方・地域に触れ合ってみたり、地方・地域に行ってみるという機会が得られるのは、本当に貴重なことだと思います。自然発生的に地方・地域と繋がるということは、なかなか難しくなってきているのではないかと感じます。
―確かにそうかもしれませんね。
佐藤先生 東京に住んでいながら知る日本の地域というのは、メディアから得る情報になります。東京の子ども達は、情報・体験・教育等における地域間格差の話をメディアから得ることは多いですが、その言葉だけが独り歩きしていて、実態がどうなっているのかということを見ていない状態が多く見られます。地域に直接の知り合いがいなくて、直接的なボイスが聞けず、ある意味では断絶・隔離が起きていると言える。そう考えたときに、みらいハイスクールの取組で知り合った友達がいる町から地域に入っていくということは他人事じゃなくなります。“東京の外を知る”という機会が得られるのはありがたくて、スコープを東京から広げて、自分の知っている日本を広げてほしいと強く感じます。
―そうした価値がこのみらいハイスクール構想にあるとしたときに、今後この繋がりを通して挑戦したいことはあるのでしょうか。
佐藤先生 今回はこちらがお迎えする側でしたが、生徒から「地域のことをもっと知りたい」という声がありました。今度は本校の生徒が地域を訪れたり、地域の生徒のプレゼンテーションを聞いてみたりして、お互いをリスペクトしながら、それぞれの魅力を発見しあえるような関係になれたらいいのではないかなと思います。地域で暮らす人からすれば当たり前のことが、東京あるいは外から見たときには、魅力に感じることや新鮮で面白いと感じることが多いでしょうし、そうした刺激をし合うということが高校生同士で起こっていくといいなと思います。それを起こしていけるのがみらいハイスクールであり、地域と都市の学校が協働していく価値なんだろうと思います。
(取材:一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム 髙田奈々/編集:小谷祐介)
▶ドルトン東京学園中等部・高等部(https://www.daltontokyo.ed.jp)
東京都調布市に位置し、東京から唯一みらいハイスクール構想に参画。100年前のアメリカでヘレン・パーカスト氏が提唱したドルトンプランという教育メソッドを採用し、一人ひとりの知的興味や関心に寄り添った、学習者中心の学びを日本で初めて実現した完全中高一貫校。
<協力先企業・団体>
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