みらいハイスクール

地方との交流で感じた 何気ない日常にある新たな発見
ドルトン東京学園中等部・高等部 花さん

 

今秋、東京のドルトン東京学園中等部・高等部(以下、ドルトン東京学園)が受入側を担った「地域みらい旅in東京(以下、みらたび東京)」が開催されました。ドルトン東京学園は、東京から唯一みらいハイスクールに参画する私立の完全中高一貫校。みらたび東京では、日本各地域7校から海外留学を目指す8名の生徒が東京に集結し、ドルトン東京学園の生徒と交流しながら、1泊2日をともに過ごしました。今回はみらたび東京の受入側の生徒としてプログラムに参加した、ドルトン東京学園高等部2年の矢崎花さん(以下、花さん)に地方の生徒と交流して感じたことや自身に起きた変化等についてお話を伺います。

 

 

地方の高校生と交流してみたかった

 

―中学入試でドルトン東京学園に入学されたと思いますが、何故ドルトン東京学園を選んだんでしょうか。

 

花さん 私はドルトン東京学園の2期生に当たりますが、小学校のときに母親が「ドルトンプランを採用した学校が東京にできるらしいよ」と教えてくれたことがきっかけで、中学受験することに興味を持ちました。

 

―ドルトン東京学園ではどのような学びが待っているんでしょうか。

 

花さん 単なる座学で先生が黒板の前に立って教えてくれるような授業ではなく、自分で主体的に考えることを中心にしたスタイルが多いと思います。今は高校2年生で卒業探究に取り組んでいて、「都市と地方の教育格差」をテーマにしています。ドルトン東京学園では、海外留学に行ったりすることは、日常茶飯事のようになっていて、クラスの誰かが留学でいないということも当たり前のことのように思っていました。ところが、「高知の高校だと1校で1人留学行くかどうかなんだよね」という話を聞く機会があって、カルチャーショックを受けた経験があったんです。そこから、地域間での教育格差というものに関心を持つようになりました。

 

 

―では、みらたび東京に参加してみようと思ったのはどうしてでしょうか。

 

花さん 卒業探究の担当が佐藤貴明先生(以下、佐藤先生)で、この佐藤先生が声をかけてくれたのがきっかけです。卒業探究のテーマは立てたものの、地方の高校生と交流できる機会がなかなか掴めずにいました。そんなときに佐藤先生が声をかけてくれて、参加を決めました。地方の高校生と交流ができるし、話を聞くことができたら面白そうだなと思いました。

 

―佐藤先生がきっかけをくれたんですね。

 

花さん 佐藤先生から、今回のみらたび東京は「東京で世界に触れる」がテーマで、海外留学や海外進学に関心のある生徒が各地から集まると聞きました。私自身、海外経験があって、この経験を地方の高校生に聞いてもらうことで、自分の経験を振り返り言語化することは良い経験になるのではないかと感じましたし、地方の高校生のみんなにとっても何か刺激になればいいなと思ったことも参加の決め手ですね。

 

 

当たり前だと思っていたことが、当たり前じゃないんだなと気付かされた

 

―実際に参加してみてどうだったでしょうか。

 

花さん まず何より覚えているのは、来てくれた生徒のみんなが私の海外経験のプレゼンテーションに対して、興味を持って聞いてくれたことです。ものすごく真剣な表情で、メモをとったりする姿はとても印象的で、今でも心に残っています。それと同時に、これだけ海外へ真剣な思いでいる高校生たちが、もっと自由に海外留学に行けるようになるといいなとも感じました。

 

―ご自身のプレゼンの時間以外でも印象的だったことはありますか。

 

花さん 品川駅から成城学園前駅まで、みんなで一緒に電車移動をしたんですけど、この時間に雑談をしたことが案外印象に残っています。ドルトン東京学園での何気ない日常のことを話すと、みんなから「何それ、すごい!」と沢山言ってもらったんです。私の中では当たり前だと思っていたことが、当たり前じゃないんだなと気付かされました。違いにびっくりしましたし、ある種の面白さも感じた気がしています。同じ日本の中の同じ日本人なのに、こんなに違うんだと。

 

―みらたび東京で、そんな気づきも得た花さんはその後、この旅で縁ができた山形県立小国高校(以下、小国)と島根県立島根中央高校(以下、島根中央)に一人で訪問されたそうですね。

 

花さん みらたび東京1日目の夜に大人も生徒も混じって、自由に対話をする時間がありました。その時に地域・教育魅力化プラットフォーム代表の岩本悠さんとお話しをさせていただく機会があって、そこで「地方の教育や地域間格差に関心があるなら、せっかく今日繋がりができたんだし、実際に地方の高校に行ってみなよ」と背中を押してくれたんです。みらたび東京には、小国の教頭先生と島根中央の英語科の先生も参加されていて、早速訪問をさせていただく相談をしました。

 

―すごい行動力ですね。

 

花さん これまでの自分は行動に移せないことが多かったんですが、地方の高校生の行動力に刺激されたと思っています。一人で東京に来ること自体もすごいことだと思うし、きっと勇気のいること。私も行ってみようと思いました。

 

 

地方の高校への訪問は驚きと気づきの連続

 

―実際に行ってみていかがでしたか。

 

花さん 小国には、日帰りで行ったんですか、1~5限まで授業に参加させて頂きました。突発的に来た私に対して、とにかくみんな優しくて、あたたかい受容力があることに驚きました。都会だと一歩引かれてしまうイメージ。“変なやつ扱い”をされなくて、すごく安心感がある中で授業を受けさせてもらった気がします。

 

―ドルトン東京学園と違いを感じた部分はありましたか。

 

花さん わかりやすく違ったのは、小国の生徒みんなタイピングが物凄く早くて驚いたこと。あと、学校のいいところを聞いたときに、地域や地域の人とのかかわりの深さがあるということを知りました。ドルトン東京学園だけではなく、きっと東京の学校にはそういうものは無くて、これも驚きです。良い驚きの一方で、別の驚きもありました。ある生徒の将来に関するプレゼンを聞く機会があって、そこで「大学に行きたいと思っていたけど、経済的な事情もあって就職することにした」という話を聞いたんです。東京では、「どこの大学に行くの」という会話が当たり前になっていて、“大学に行ける”ことが大前提。でもそれも当たり前ではないんだなという衝撃と気づきがありました。

 

 

―沢山の驚きがあった小国の後に、島根中央にも行かれたんですよね。

 

花さん 島根中央では「すごい」ばっかり言っていた記憶があります。特にすごいと思ったのは、高校と町との連携ですね。とても綺麗な寮を見学させてもらったんですが、その寮も町が建てたと聞いて、町がこんな協力的なことがあるんだとここでもまた驚きです。

 

―みらいハイスクールで一緒に活動している地域の高校は、どこも町と学校が強く結びついていますね。

 

花さん 実際、川本町役場の方に話をお聞きする機会を頂きました。その時に何故こんなに高校に協力的なのかと質問してみました。その時の「川本町は人口3,000人の町で、高校が町の希望。3,000人のうち200人が高校生で、若者がいなくなることは町自体の存続に関わるんだよ。だから町としても高校の取組を全力で応援するんだ」という返答は、とても印象的でした。

 

 

迷いの中で、次に私がやりたいこと

 

―地域の高校への訪問を経て、今何を感じていますか。

 

花さん 率直に言うと、迷いの中にいます。これまで地方と都市の格差をどう埋めればいいんだろうとずっと思っていました。でも、みらたび東京での出会いや小国・島根中央への訪問で、地方の高校でしか得られない魅力があるということが分かったんです。必ずしも埋めることが正しいとは限らない。格差があることが問題なのか。格差とは何か、解決策とは何か。こうしたことが頭の中をぐるぐるしています。

 

―迷いもある中で、今後何をしていきたいと考えますか。

 

花さん 迷ってはいるのですが、ひとつ紛れもない事実があったと思っていて、東京での高校生活をあのまま続けているだけだったら、地方の高校や高校生のことは何にも知らなないままだったということです。繋がって、そして知るということはとても重要だと感じました。一回きりの繋がりで終わるのも勿体ない。だから、地方と都市の高校との交流の機会をつくりたいと思っています。それが、迷いの中にいる私が次にできることだと思います。

 

(取材・編集 地域・教育魅力化プラットフォーム 小谷祐介)

 


 

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